of Casa CABaN HAYAMA

Story vol.7
22, Dec 2025
海の印象が強い葉山には、もうひとつの顔があります。それが「山の葉山」の世界。「葉山」という地名の由来には諸説ありますが、「端山(はやま)」という言葉が転じたという説があります。海岸線を歩いてみると、山が海岸線のすぐ近くまで迫っていることがよくわかり、「なるほど、山の端か」と納得するのです。山の緑、海の青。豊かな山があるからこそ、美しい海が保たれる。山から流れ出す水は、栄養分や有機物を海へと運び、豊かな海洋生態系を育くむのです。山と海が響きあう葉山。その風景に身を委ねていると、自然の繊細なバランスの上に暮らしが成り立っていることに気づかされます。海を見つめるとき、同時に山の気配を感じる――そんな調和の美しさが、この土地の本質なのかもしれません。Casa CABaN HAYAMAでのステイでは、葉山が持つ山の魅力にも触れていただきたいのです。

葉山を代表する山といえば、仙元山、三ヶ岡山(大峰山)、そしてソッカ山があります。それぞれの標高は仙元山が118m、三ヶ岡山(大峰山)が140m、ソッカ山が189m。いずれも標高は高くありませんが、トレイルに足を踏み入れると、森の静寂が体を包みこみます。木々の葉を揺らす風はやさしく肌を撫で、耳を澄ませば野鳥のさえずりが心をほどき、柔らかな土の温もりを足の裏に感じ、やがて呼吸が深くなってくることでしょう。低山ゆえに、頂までの道のりは決して険しくありません。それでも、山頂に立った瞬間に湧きあがってくる達成感と清々しさは格別です。山は心を鎮め、感覚を研ぎ澄ませてくれる存在。Casa CABaN HAYAMAから20分ほどのハイキングでたどり着く、仙元山や三ヶ岡山(大峰山)から見下ろす葉山の町は、山と海の狭間に息づき、自然と人の営みが溶けあうような世界を見せてくれます。

山が豊かな葉山では、川の情景にも心を奪われます。二子山山系を源とし、森戸海岸へと流れ出る森戸川は、この地の自然の豊かさを象徴する存在です。川に沿って続くトレイルを歩いて源流域を目指せば、やがて森は深くなり、空気の変化を感じます。そこに広がるのは、三浦半島随一とも称される秘境の趣。木々の背は高く、枝葉が重なりあい、光は細やかな木漏れ日となって地面に模様を描きます。足もとを流れる清流には、小魚が群れをなし、静寂の中に生命のリズムが響きわたるのです。この森では、サンコウチョウやオオルリといった貴重な野鳥たちが姿を見せます。その一瞬の出会いは、まるでこの地が秘める自然の記憶を垣間見るようで、生命の濃度を体感することができるでしょう。

山を降りて海岸に出る。すると、森の中のトレイルで歩みを進めるたびに体の内側を満たしていったエネルギーが、視界が開けると同時に、全身に行きわたるのを感じます。「山は充電、海は浄化」という言葉があります。山では大地のエネルギーを取りこみ、静かな呼吸を取り戻す。海では、余分なものを洗い流し、心身をリセットする。どちらも自然の持つ癒しの力ですが、その質は異なり、互いに補いあうように作用するのです。葉山は、山と海の恵みを享受できる稀有な土地。大地と海風のエネルギーが交わるこの地では、心と体が自然のリズムに調和していくのを感じます。